業績報告

当期の業績と事業環境

2025年9月

当期の世界経済は、地政学リスクや主要国の政策動向による景気減速が懸念されるなど、先行き不透明な状況が続きました。

当社グループの主要販売先である半導体業界では、スマートフォンやパソコン向け半導体の需要は軟調に推移した一方で、データセンター向けAIサーバーやHBM(広帯域メモリ)等のAI関連の半導体需要が市場を牽引しました。また、パワー半導体関連の需要はEV(電気自動車)市場の停滞を背景に低調に推移しました。

当期の業績については、売上高が2,514億77百万円(前連結会計年度比17.8%増)、営業利益が1,228億43百万円(同51.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が846億52百万円(同43.3%増)となりました。受注高は1,052億26百万円(同61.4%減)、期末受注残高は3,159億45百万円(同31.6%減)となりました。

当期の配当

当社は、連結での配当性向35%を目安として、業績に応じた弾力的な配当政策を行うことを利益配分に関する基本方針としております。内部留保は、新技術・新製品の研究開発投資や優秀な人材の獲得などへ有効に活用し、企業体質の一層の強化と長期安定的な経営基盤の確立に役立てていく方針です。

この方針に基づき、当期期末配当金は1株当たり214円、年間配当金は前期比99円増配の329円(連結配当性向35.1%)とさせていただきました。

また、事業環境、成長投資の機会、足元の資金効率、 財務健全性および株価水準などを総合的に勘案し、企業価値向上と株主還元の充実を目的として、取得総額120億円(上限)、取得総数100万株(上限)とする自己株式取得を決定いたしました。

注目製品

当期、マスク関連分野で三つ、ウェハ関連分野で一つの新製品をリリースいたしました。

マスク関連分野の一つ目は、EUVマスクブランクス欠陥検査/レビュー装置ABICSの次世代機E320です。新設計の高倍率光学系の採用と照明光学系の最適化により、従来機のE120シリーズと比べてさらなる高性能化を実現いたしました。

二つ目、三つめ目は、EUVペリクル異物検査装置PELMIS EPM100と、PELMISシリーズの最新モデルのEPM200です。本シリーズは、近年EUV市場の拡大に伴い検査需要が高まっている、EUVマスクに取り付けられたペリクルと呼ばれる保護膜に付着した異物を高精度に検査し、さらにその異物の付着場所の表裏自動判別を実現した製品です。最新モデルとなるEPM200は、次世代EUVペリクルとして注目されるCNT(カーボンナノチューブ)ペリクルの検査に対応した装置です。従来困難とされていたCNTペリクル上の微細な異物の検出や、表裏自動分類機能をいち早く実現しており、加えて欠陥種別判定などの多様な機能を搭載することで、ペリクルメーカーやデバイスメーカーにおける品質管理の高度化を可能にしています。

ウェハ関連分野では、SiCウェハの表面および内部欠陥の高速検出と高精度分類までを同時に行えるSiCウェハ欠陥検査/レビュー装置SICA108を発表いたしました。SiCパワーデバイスは、EVや太陽光発電システム等での活用が進む一方で、ウェハ製造プロセスの難しさから歩留まり向上とコスト低減が課題となっています。そのような課題を解決すべく製品化したSICA108は、業界標準機として多くのお客さまに採用いただいている従来機SICA88から検査光学系を刷新し、スループットのさらなる高速化、SiCウェハの品質把握とコスト改善を実現しました。

このようなお客さまニーズにお応えする新製品の発表もあり、2025年4月には、当社の主要顧客であるインテル コーポレーションより「EPIC Supplier Award」を受賞いたしました。本賞は、同社のサプライチェーンにおける当社の品質改善と優れたパフォーマンスが評価されたことによるものです。今後も当社は、お客さまに寄り添い課題解決に向けたソリューションの提供を続けてまいります。

今後の取り組み

足元では厳しい事業環境が続いており、当期の受注高は1,052億円と前期を大きく下回りました。しかし、半導体需要はさまざまな用途で拡大を続け、2030年には1兆米ドル市場になると予想されております。また、半導体の進化を支える微細化、新材料、新構造の技術トレンドに変化はなく、各分野においてお客さま目線の製品、サービスを提供し続けることにより中長期的な成長機会があると考えております。

当期から2030年6月期までを対象とする中期経営計画がスタートし、「圧倒的な開発スピード、高い技術力、顧客との強固な信頼関係の構築により売上最大化とさらなる成長を目指す」という方針のもと、取り組みを進めております。施策として掲げた「リードタイムの短縮」においては、リソースの最適化や製造・装置立ち上げ工程の改善等を通じて、主力製品を含む多くの製品で受注から納品までの期間を目標の0.5~1.5年に向け、大幅に短縮することに成功しました。

また、二つ目の施策である「サービスビジネスの拡大」も、目標であるサービス売上高構成比率20%以上に向け取り組みを進めております。これは、納入済み製品のメンテナンスや消耗品の交換に関わるビジネスで、当社製品をお客さまに安心してご使用いただくためには、サービス体制の強化が不可欠です。お客さまからさらなる信頼を獲得し、今後のビジネス拡大につなげるためにも、誠実かつスピーディーな対応に一層磨きをかけてまいります。

今後も外部環境の変化に柔軟に対応しつつ、お客さまの満足度向上と中長期的な企業価値の向上を目指し、中期経営計画を着実に推進いたします。